転職のノウハウ

転職回数が多い人の転職……採用の理由とは?企業の採用事情を考える

転職回数が多い人が、転職活動において書類選考で苦戦することは珍しくない。実際、ある有名な大企業では、「転職回数は3回まで」と条件を課しているところもある。40歳にして11回目の転職に成功した人物の採用の理由とは? 人材コンサルタントの小松俊明が解説します。

小松 俊明

執筆者:小松 俊明

転職のノウハウ・外資転職ガイド

転職回数が多い人の転職、採用の理由とは?

転職回数が多い人の転職、採用の理由

転職回数が多くても職が決まる人の特徴とは

転職回数は3回まで。これは実際にある有名な大企業の中途採用で、人材紹介会社に課された条件である。転職回数の多い人が、転職活動において書類選考で苦戦することは珍しくない。そんな中、40歳にして11回目の転職に成功した人物もいる。その実話をもとに、人材コンサルタントが「企業が求める人材」を改めて考える。
 
<目次>
 

転職回数の多さが不採用に影響する理由

まず、なぜ採用現場で、転職回数が多い人が敬遠されるのか。
 
第一の理由は、転職回数の多い人は、仕事への不満を原因に毎度転職を繰り返しており、採用してもまた仕事に不満を感じてすぐに辞めてしまうのではないかという印象を持つ人がいるからである。
 
そしてもう一つの理由は、周囲の社員とのコミュニケーションや対人関係に対する不安を抱くからである。チームプレーができないのではないか、だから組織に定着せず転職を繰り返したのではないかと懸念されるのだ。
 
もちろん、そうしたケースも中にはあるだろうが、全く当てはまらないケースもたくさんある。人が転職する理由は、仕事が激務で体調を崩したり、会社の業績不振が原因であったりと、本人が希望しない場合もある。それにもかかわらず、転職回数の多さがマイナスに評価されるのは、以上のような事実とは関係ない強い先入観による理由が大きいのである。
 

中途採用が少なく高齢化が進んでいる組織ほど、転職アレルギーは強い

転職回数が多い人が、多くの採用現場で不当な差別を受けていることはおそらく事実であろう。もちろん会社によっては、面接官が偏見を持たないよう、面接官が持つべき倫理観や公平な採用を実現するための判断基準について明文化し、社員教育を徹底する会社もあるが、そうした取り組みがほとんど行われていない会社も多数存在しているのが現状である。
 
その場合、一部の管理職社員や転職経験のない中高年世代の価値観で、「中途採用で応募できる人の転職回数は3回まで」というような、内々の採用基準が社内に形成されてしまっている会社もあるのだ。
 
転職社会を迎えてから久しく、多くの企業で中途採用もするようにはなったが、新卒から定年まで勤めあげる社員の割合が大きい企業は、大企業を中心に今でも多い。中途採用による外部人材の積極的な登用による多様な人材活用がうまく機能していない会社もあり、そのような会社には転職アレルギーが強い企業文化が存在していることもある。
 
転職を希望する人は、外部人材登用に関する企業文化や転職アレルギーの有無についても事前に調査しておきたい。会社の業績や待遇、人との出会いなどが転職の決定要因になりがちだが、中途採用者が入社後に活躍する職場環境や企業文化があるのかどうか、そこも重要な要素として検討することを勧めたい。
 

40歳で11回目の転職を成功させた人は、何が評価されたのか

採用の現場で転職回数の多さが懸念されることについて考察したが、ここで実際に、40歳で11回目の転職を成功させた人の話を紹介したい。
 
佐藤さん(仮名)は、約18年間のキャリアで10社を経験している。1社あたりの平均勤務期間は2年に満たないことになる。平均して2年に一度の転職活動は大変だったはずだが、それよりも驚くのは、この間に失業期間がないというのだ。
 
彼は最初に勤めた日本の会社を辞めた後は、外資系企業でキャリアを積んでいる。新卒入社直後から経理部に配属され、以来一貫した経理のキャリアを積んできた、まさに経理業務に精通した即戦力人材である。
 
本人と話をした印象は、前述したようなチームプレーができない雰囲気であるとか、対人関係やコミュニケーションに支障があるどころか、その真逆のような人物である。人格に優れ、人あたりが柔らかく温厚な性格であり、仕事の面でプロ意識も高い。まさに理想の上司といってもいい人物でもあり、実際同僚との関係は常に良好だったという。
 

転職先の会社に見られる共通した特徴とは何か

転職に関する佐藤さんの自己分析を聞くと、本人の特徴をよく表す表現が2つ見つかった。佐藤さんによれば「自分は人が困っている話に弱い」。これまでの転職は、すべて人材紹介会社のエージェントから話を持ち掛けられたという。
 
業績不振や粉飾決算、買収、リコール、その他、何かトラブルが起きてマスコミをにぎわせた会社は、そのトラブル後に会社の立て直しが必要となる。そのような話を中心に、色々な新しい転職機会を受けるようになっていったというのだ。
 
世間では、火中の栗を拾うようなことは避けたいと思う人も多いものだが、何とか自分がその状況を好転させたいと考え、経理担当者の後任として、佐藤さんが入社したケースが多いことがわかった。つまり、平時の経理業務ではなく、様々なトラブル後の整理と立て直しができる経理の専門家として、その希少な経験が買われているのである。
 

会社や業界の枠を超えた専門家同士のネットワークを大切にしている

佐藤さんの転職でもう一つ顕著な特徴は、退職したすべての会社の人々と今でもつながりがあって、公私に渡り相談したり、相手からも相談を受けたりする関係が続いているということ。転職する人の中には、職場の人間関係に悩んで転職する人もいる。また人間関係が目立って悪くなくても、退社後には前職で知り合った職場の人々とは疎遠になる人も多いはずだ。
 
しかし、経理が専門性の高い仕事であるからだろうか、もしくはトラブルに見舞われた会社には特有の悩みがあるからだろうか、佐藤さんは過去の10社で知り合った経理の仲間達ほとんどと、今でも交流しているというから驚かされる。
 
この話を聞いて、私は企業の採用事情の真に迫った思いがした。企業が即戦力を求めるのは当然のこととして、本当に求めている人材とは、会社が最も辛い時、どん底にあるようなときにでも、状況改善のために善処してきた実績がある人物ではないだろうか。
 
複雑で前例がないような問題解決のために、会社の外にも信頼して相談ができるような仲間を持っている佐藤さんのような存在は、実は本当の意味で会社に貢献できる人材であり、転職に強い人物なのである。
 

大事なのは、転職回数ではなく、会社に貢献してきた実績

採用は難しい。有名企業や大企業でも、採用の失敗は繰り返されている。裏返せば、個人の転職も難しく、失敗することもあるものだ。そうした意味では、転職の回数は多くても少なくてもいいのかもしれない。
 
自分が貢献できる特別な経験を積み、仕事仲間を尊重してお互いに助け合える関係を長期にわたり構築していけば、どの会社にどれだけの期間所属していたとしても、私達はプロ意識を持ってやりがいのある仕事を続けることができるに違いない。
 
転職回数が多くても、常に活躍して人から必要とされてきた佐藤さんの実直な話を聞いて、溜飲が下がる思いがした。転職歴に悩む多くの人に、この話を届けたい。

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