ミュージカル/注目のミュージカルレビュー・開幕レポート

2015年5~6月の注目!ミュージカル(4ページ目)

早くも夏の日差しが眩いこの頃、大作が続々登場する一方では、規模は小さいながらも意欲的な新作、オリジナルミュージカルが上演。『あさはなび』『アイランド』『ブレイン・ストーム』『ジーザス・クライスト=スーパースター』『秘密の花園』『DOWNTOWN FOLLIES Vol.10』など見逃せない作品をご紹介します。追加作品、観劇レポートも随時更新しますので、ぜひ定期的にチェックしてください!

松島 まり乃

執筆者:松島 まり乃

ミュージカルガイド


DOWNTOWN FOLLIES Vol.10

5月26~31日=ルミネtheよしもと

『DOWNTOWN FOLLIES Vol.10』

『DOWNTOWN FOLLIES Vol.10』

【見どころ】
島田歌穂さん、玉野和紀さん、吉野圭吾さん、北村岳子さんというミュージカル界の実力派たちが、歌とダンスとスケッチ(寸劇)を高平哲郎さんのお洒落な構成・演出で魅せる最強ミュージカル・レビュー。2年の沈黙を破り、その10回目の公演が行われます。

今回は4人のオリジナル・メンバーに加え、振付家としても活躍する平澤智さんも出演。ミュージカルナンバーからスタンダード、歌謡曲までを歌いあげ、バレエもタップもヒップホップも踊り、時事ネタを取り入れたコントもこなし…と、2時間ほどの舞台に驚きと感動、そして笑いをぎゅっと凝縮し、届けてくれます。芸達者の面々だからこそ可能なとびきりゴージャスなショー、一度観れば中毒になる方、多いようですよ!
『DOWNTOWN FOLLIEES Vol.10』写真提供:よしもとクリエイティブエージェンシー

『DOWNTOWN FOLLIEES Vol.10』写真提供:よしもとクリエイティブエージェンシー

【観劇ミニ・レポート】
見渡せば「大人」の方々が圧倒的に多い客席。彼らが深く、ゆったりともたれる姿にはリラックス感が漂い、今回10回目を重ねたこのシリーズへの信頼感が見て取れます。
『DOWNTOWN FOLLIEES Vol.10』写真提供:よしもとクリエイティブエージェンシー

『DOWNTOWN FOLLIEES Vol.10』写真提供:よしもとクリエイティブエージェンシー

まずは黒スーツ姿の島田さんが壇上に上がり、コミカルに指揮棒を振って6人編成のバンドが序曲を演奏。続いてメンバー全員が登場し、「とざい、とーざい…」とタップを踏みながら「裸や差別語、いやらしい腰の動きは禁止…」と狂言風にこのショーのお約束=コードを語ります。
『DOWNTOWN FOLLIEES Vol.10』写真提供:よしもとクリエイティブエージェンシー

『DOWNTOWN FOLLIEES Vol.10』写真提供:よしもとクリエイティブエージェンシー

独創的な和風チャンツに引き続いては、華麗なるタップナンバーが展開。いずれもミュージカル界に聞こえた実力派ばかりとあって、余裕綽々の姿が心地よく目を楽しませます。中でもタップの名手、玉野和紀さんはソロの度に様々なバリエーションを見せ、流石。
『DOWNTOWN FOLLIEES Vol.10』写真提供:よしもとクリエイティブエージェンシー

『DOWNTOWN FOLLIEES Vol.10』写真提供:よしもとクリエイティブエージェンシー

前半は「映画になったミュージカル」特集ということで、映画化された様々な作品をメンバーがかわるがわる、「いじり」ながら紹介。『レ・ミゼラブル』では工事現場の青年(吉野さん)が「いつの日にかスター~、かなわぬ夢だけど~」と「夢やぶれて」を、『アニー』では「子役上がりで~す!」と登場した島田さん演じる赤毛のアニーと、今年公開の映画版を思わせるアフリカ系のアニー(北村さん)が険悪ムードで「トゥモロー」を歌い、大いに笑わせたかと思えば、玉野さんと島田さんがそれぞれアステアとパウエルに扮して「ビギン・ザ・ビギン」にあわせ、本格的なアステア・ダンスを披露。硬軟自在なパフォーマンスが、極上のワインのごとく、大人の観客を酔わせます。
『DOWNTOWN FOLLIEES Vol.10』写真提供:よしもとクリエイティブエージェンシー

『DOWNTOWN FOLLIEES Vol.10』写真提供:よしもとクリエイティブエージェンシー

また今回は平澤さんが「アイルランド」をテーマにとりあげ、男性陣で『リバーダンス』を踊ったり、『Once』を話題に上らせたり。アイルランド文化が専門の一つである筆者にとってはとりわけ興味深く、日本のミュージカル俳優の踊るリバーダンスに目が釘づけでした。(最もアイリッシュ・ダンスの雰囲気を醸し出していたのは…玉野さん!)
『DOWNTOWN FOLLIEES Vol.10』写真提供:よしもとクリエイティブエージェンシー

『DOWNTOWN FOLLIEES Vol.10』写真提供:よしもとクリエイティブエージェンシー

後半は「島田准教授による教養講座」で“本当は怖い”童話の世界が語られた後、『白雪姫』『灰かぶり』等を寸劇で披露。最後に島田さんがエルザ、北村さんがアナに扮し、ハチャメチャにアレンジした『雪の女王』を大真面目に演じ、楽しませます。その島田さんがしっとりとスタンダードナンバー「Someone to watch over me」を歌い上げ、また皆で「いい仲間」を歌い、ショーはお開きに。この余裕、このラグジュアリー感は、経験も華もあるこの面々、そしてこの「ダウンタウン・フォーリーズ」だからこそ。次はどんな「大人のエンタテインメント」を観られるか、早くも次回の公演が待ち遠しく感じられます。


ジーザス・クライスト=スーパースター

5月30日~6月21日=自由劇場

『ジーザス・クライスト=スーパースター』

『ジーザス・クライスト=スーパースター』

【見どころ】
アンドリュー・ロイド=ウェバー(作曲)&ティム・ライス(作詞)が、キリスト最後の7日間をユダの視点からシンプルかつ鮮烈に描きだし、発表時から現在に至るまで、多くの若者たちのハートを鷲掴みにしている作品。“ロック・オペラ”というジャンルばかりでなく“レコード発売でヒット曲を生み出してから舞台を製作”という図式を確立し、ミュージカル史に大きな足跡を残した名作が今年も帰ってきます。

劇団四季版にはリアルな「エルサレム・バージョン」と和風のビジュアルと音楽アレンジでドラマの本質部分を照らし出す「ジャポネスク・バージョン」の2演出がありますが、今回は「エルサレム・バージョン」が登場。現代音楽からチャールストンまで、当時はまだほとんど無名だったロイド=ウェバーがボキャブラリー豊かに書いた音楽の渦の中で、悶え、苦悩する人々のドラマを、自由劇場という客席500程度の濃密な空間で堪能しましょう!

*次頁で『秘密の花園in concert』をご紹介します!
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