韓国

日本人が韓国で子育てをしたら。移住した親2人に聞く「海外で暮らし、子育てをすること」のリアル(2ページ目)

グローバル化した現代、海外で子育てをする日本人はもはや珍しくない。お隣の国韓国で、子育て真っ最中の2人の日本人に、韓国の教育や子どもの生活の様子などについてお話を聞いた。

松田 カノン

執筆者:松田 カノン

韓国ガイド

“学歴”が重要視される韓国での学校生活のリアル

子どもたちが塾に通っていることを前提に授業を行う学校もある。学校の宿題は多くはないが、子どもたちは塾の宿題で忙しい

子どもたちが塾に通っていることを前提に授業を行う学校もある。学校の宿題は多くはないが、子どもたちは塾の宿題で忙しい

韓国は就学前から外国語、特に“英語教育”を始める家庭が多い。幼稚園でさえ英語の授業をしない園を探すのが難しいほどだ。

外国語に限らず、あらゆる科目で早期教育を行う家庭が多いのだが、このことは、名門大に進学し、名のある大企業に就職することが成功と考える人が多いからだ。そんな韓国での学校生活はどういったものなのか。

「校則は日本は窮屈感があるけれど、韓国はもう少し自由な感じです。髪型とか持ち物とか、日本ほど厳しくはないですね。でも、学校は本当に勉強だけしに行くところという印象です。運動会などの行事も短時間で終わってしまう。夏休み、冬休みの宿題もないし、工作や自由研究などの課題もありません。それは子どもたちからするとうれしいことかもしれませんが……。韓国の学校教育は“塾ありき”です。学校のテストも塾で勉強していないと点数が取れないんですよね」(Aさん)

「勉強で忙しくて、勉強以外のことを楽しむ時間があまりとれません。今しかできないこともあると思うんですが……そこに対しては複雑な想いがあります」(Bさん)

先ほど触れたように、韓国では日本以上に“学歴”が重要視される。大学入試の準備に多くの時間を費やせるよう、幼い頃から早めにいろいろな分野の勉強をする。

この「先行学習」をいかに早く進めるかが、受験の勝敗を決めるひとつの要因になるとも考えられており、例えば小学6年生でも、すでに中学1年生、2年生の学習を進めている子どもは珍しくない。周りの環境がとにかく「勉強」であり、みんなが当たり前にできる水準はどんどん上がる。だからやらなければ落ちこぼれてしまう。

このような背景を踏まえても、韓国ドラマや映画などで描かれる学生たちの生活はあながち大袈裟というわけではない。小学生の低学年でも、毎日塾に通っている子どもは多い。帰宅時間も夜10時を過ぎることは珍しいことではない。「有名大学に進学し、大企業に就職する」という最終的な成功を手にするため、子どもたちは、幼い頃からとにかく勉強で忙しいのだ。
 

公教育費用の負担は少ないが……“塾費用”が親を悩ませる

韓国の塾の授業料は日本より高額だ。しかも複数の塾に通うのが当たり前なので親の負担は大きい

韓国の塾の授業料は日本より高額だ。しかも複数の塾に通うのが当たり前なので親の負担は大きい

韓国の公教育の場ではさまざまな形で子育て家庭に対する支援が行われている。

「学校で使う教材や教具などはほとんど学校側が用意してくれます。中学・高校の制服代も支援が出ます。制服を一式そろえると30万ウォン(※3万3560円)くらいになりますが、それは支援金でまかなえます。給食も無償なのでお弁当を作る必要がないのはいいですね。親が公教育に介入する必要は年々減ってきていてありがたいです。学校関連の連絡、案内、申請はだいたいネットです。韓国は何かと新しいシステムの導入が早いので、そういった変化についていくのは大変ですが、その点は頑張っています」(Bさん)
 
ただ、公教育費用の負担が少ない反面、私教育にかかる費用は保護者を悩ませる。

「塾の授業料がかなり高いんですよね。日本の予備校とこちらの授業料を比較したことがあるんですが、韓国は日本の2倍でした」

Aさんがそう話すように、もともと韓国の私教育費は高い傾向にあるが、続く物価高の影響で年々授業料は右肩上がりだ。

2023年の韓国の合計特殊出生率は「0.72」という危機的な数字がはじき出され話題となっているが、深刻な少子化の原因の1つに、子育てにかかる教育費の負担が大きいことが挙げられる。

公教育の場での教育支援は年々向上しているものの、私教育をせざるを得ない環境、社会構造ゆえに、結局親の金銭的負担が軽減されることはないのだ。
 
なお、多文化家庭を対象にした支援も実はいろいろとある。
 
「長女は小学生のとき、多文化家庭訪問教育の一環で大学生メンターが学校の勉強などを見てくれたり、一緒に遊んでくれたりするサービスを利用しました。そのとき韓国語の語彙(ごい)がずいぶん増えました。他にもサッカーやオペラのチケットが配布されたり、体育関連の支援では、スピードスケートも習いました。地域の支援センターや教育庁から、日韓家庭の友人たちと行っている日本語・日本文化教育関連の会に助成金が下りたこともあります」

韓国は今、「多文化人口112万時代」といわれており、全体の人口に対する多文化家庭が占める割合は年々増加している。それに伴い、さまざまな多文化支援政策が打ち出されており、多文化共生社会の実現を目指している。

※レートは2024年4月17日時点

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