宅地建物取引士(宅建)試験/宅建試験に合格するための勉強法

宅建に合格できない理由・学習で重要な3つの“意識”

宅建試験に合格するための学習、特に法律学習において、はじめに大きな壁として目の前に立ちはだかるのは「法律用語」です。これを正確に覚えるところから学習がはじまるといっても過言ではありません。つぎに、全体像を意識することも大切です。最後に計算問題・数字暗記問題の学習方法についても知っておきましょう。

田中 嵩二

執筆者:田中 嵩二

宅建試験ガイド

法律用語を意識していない

「善意」と「悪意」
「隠れた瑕疵」
法律用語「善意」の説明

宅建に合格できない理由・学習で重要な3つの“意識”


「債権の準占有者」

さて、これらの言葉の意味を正確に説明できるでしょうか。

もちろん、すべて日本語なのでなんとなくそのイメージは湧いてくるはずです。しかし、法律学習においては、それが一番危険なのです。

日本で土台となる法律のほとんどが明治維新と第二次大戦後に海外から輸入されたものです。法律も車や食料と同じく海外に輸出したり輸入したりします。多くの場合、国が戦争に負けると、勝った国の法律を輸入させられます。たとえば、民法は、明治維新後の不平等条約を撤廃するためにとにかく急いでフランスにあった民法を翻訳し、それを土台にドイツの民法なども付け足したものです。

誤解をおそれずに言えば、翻訳する際に間違えてしまった言葉がたくさんあり、それを法的に正しい意味に修正することで、本来の言葉の意味とは異なった意味になってしまったものが「法律用語」として残ってしまっているわけです。

上にあげた言葉はそれぞれ、

・「善意」=知らないこと 「悪意」=知っていること
・「隠れた瑕疵」=取引通念からみてこの種の物が通常であれば有するべき品質・性状を有さず目的物に欠陥が存在すること
・「債権の準占有者」=債権者以外の者で債務者側からみれば債権者に見えてしまうような人

を意味します。

【解決方法】

1.思い込まない

法律に出てくる用語は日本語と思わず、まるで英語を学ぶような感覚で、ひとつずつ言葉の意味を調べて学習することが大切です。スポーツなどでへんな癖がつくと直すことが困難なように、間違えて覚えてしまった法律用語を直すのは困難を極めますので要注意です。

2.初学者は惜しまずプロから学びましょう
学習のはじめの段階で間違いだらけで覚えてしまったら、宅建試験に合格できないだけでなく、その不正確な法律知識で自分や周りの人の仕事や生活を危うくする可能性もあります。はじめのうちは時間やお金を惜しまず、法律の専門家から正確な知識と考え方を学ぶ方が、長い目で見れば得することになります。


全体像を意識していない

宅建試験日が迫り、難しい法律用語をテキストや問題集で目にすると、「とにかく、Aランクの出題率の高いところだけをやっておこう」と思ってしまうものです。もちろん、発想としては間違えていないのですが、法律の性質上、まったく全体像を意識しないで部分的に虫食い状態に学習することは、結局は理解が遅くなり合格も遠のく可能性が高くなります。

法律は言葉の数学だからです。

ax+bx=x(a+b)

という数学の方式を利用して作られているのが法律です。つまり、共通項を前に前に移動することで重複を避けて、法律全体の条文の数のスリム化を図っています。

たとえば、不動産の売買契約を例に説明しましょう。不動産の売買契約が代金不払いで契約解除になるとしましょう。この「契約解除」という内容は、売買契約以外の契約にも共通しているので、条文では「売買」の箇所ではなくそれよりも前の「契約総則」にまとめて書かれています。また、不動産に対する権利一般については、さらに前の「物権」にまとめられているし、売買契約を行う売主と買主に共通する「人」という概念については民法自体の「総則」の第3条以下に書かれています。

これをパンデクテン・システムといいます。多くの法律がこの手法で書かれています。

【解決方法】

1.はじめに全体像を知っておく
宅建試験に合格するためには、法律の条文や判例の言葉を正確に暗記しなければなりません。実際の過去問をみるとわかりますが、まるで重箱の隅を突っつくような細かい知識を問うものが出題されます。直前期になればなるほど、木を見て森を見ない学習になるのは仕方のないことです。したがって、森を見るような学習ははじめの段階でしておくのがベストです。

ただ、それぞれの法律制度の全体像をわかりやすく説明している宅建受験用のテキストは、私の知る限り数冊しかありません。各社、字数の関係上そこまで書いていないのが現状です。

2.時に立ち止まり他の制度と関連させる
テキストで債務不履行・解除のところを読むと、多くの場合、不動産の売買契約を例に書かれています。その際、たとえば、「これが委任契約だったら?」「請負契約だったら?」「代理業者が契約していたら?」「売主が宅建業者だったら?」「抵当権がついていたら?」「連帯保証人をつけていたら?」といろいろと想像力をはたらかせてみると、これまで学んだ個別の知識が1つにまとまって行くことに気付きます。


数字に苦手意識をもっている

宅建試験に数字がでるのか、と思われている方もいるかもしれません。宅建業法の媒介・代理契約における報酬額の計算、建築基準法における容積率・建ぺい率の計算、税法や統計問題で税率や統計上の数字が出題されています。数字を見ただけで苦手意識を持ち、「1~2問程度だし捨てようかな」という方もいたります。しかし、これはかなりもったいない。下手するとこれが原因で不合格になる可能性もあります。

【解決方法】

1.計算問題は計算方法がわかれば必ず正解できる
計算問題は、他の問題と異なり、法律特有の微妙な判断が求められることがありません。計算すれば100%正解を導くことができます。ですから、事前に一度は、過去問を利用して自分で計算して正解を導いておきましょう。どうしてもわからない場合は、恥ずかしがらずに講師に質問しましょう。もちろん、私に質問してもらってもかまいません。

2.数字は直前期に暗記する
極論すれば、宅建試験時間の2時間のうちはじめの10分程度暗記していれば、数字の問題は正解できます。統計問題の数字などは、試験当日に暗記すれば点数が取れるので、苦手意識を持つこと自体がもったいない。試験当日に試験会場で暗記する数字をノートにまとめて持って行きましょう。
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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