土地活用のノウハウ/土地活用の基本とテクニック

土地活用の上手なコンセプトの立て方

土地活用を成功に導くためには、市場調査に基づいたコンセプトづくりを行い、それに従った建物のプランを考えることが重要です。あなたはどのようなターゲットに向け、どう差別化を考えますか?

谷崎 憲一

執筆者:谷崎 憲一

土地活用ガイド

市場調査に基づいたコンセプトづくり

さて、以前「土地活用の成功には市場調査が大事!」というテーマを取り上げましたが、市場調査を行った上で、土地活用を成功させるためには「コンセプト」を明確にしておくことが重要だと説明しました。コンセプトとは、どのような入居者をターゲットとするのかということです。

入居者ニーズに関する明確なコンセプトを持っているのと持っていないのとでは、建物の基本的プランや仕様、さらには完成後の賃貸経営に大きな影響を与えます。コンセプトとともに、その敷地にどのような建物が建てられるかについては、以前のテーマ「用途地域」とも密接に関係しますので、総合的な判断が必要です。

さて、土地活用の選択肢としては、駐車場や資材置き場として、土地をそのまま貸す方法もありますが、ここでは「賃貸建物を建てる」という活用手段を中心に考えていきます。

土地の有効活用を考えるとき、闇雲に自分の思い込みやイメージだけで進めると失敗します。まずニーズの把握を行い、さらに店舗の場合は業界別の出店ニーズ、事務所の場合はオフィスの最新ニーズ、賃貸住宅の場合は最新の世代別入居者ニーズ(地域、世帯構成ごと)をしっかりとリサーチできれば、満室経営になる確率も飛躍的に上がります。

やはり、時代性とともに、目的別ニーズをしっかりと捉えているプロのサポートが必要になります。ここで言うプロとは、マーケティングをしっかりと捉えているハウスメーカー・建設会社・不動産会社の営業マンや専門のコンサルタント、土地活用プランナーなどです。彼らは、地域・目的別の賃料相場、人口動態、世帯数、人口構成比などからニーズを割り出し、蓄積されたデータをもとに適切な提案をしてくれます。

どのような用途の建物を建てるか?

一言で建物を建てると言っても、様々な活用手段がありますが、大別すれば「商業施設(商業・事務所ビルなど)」と「賃貸住宅(マンションやアパートなど)」に分類できます。また、それらの併設というのもあり得るでしょう。

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一般的に店舗やオフィスなどの商業施設は、賃貸住宅に比べ高い収益が得られます。首都圏で見ると、賃貸マンションの平米あたり平均成約単価が2,623円に対し、オフィスビルは5,259円と約2倍になっています。

しかし、商業施設は立地や環境要因に特に大きく左右されますから、商業ビル向きでない立地に建設することは難しいと言えます。また、景気や企業業績に左右されますので、滞納リスクやテナントが退去した場合の長期空室リスク、原状回復に際しての工事費用負担トラブルのリスクを充分に検証する必要があります。金融機関でも商業施設建設に関する融資はリスクが高いと判断される可能性もあり、厳しい現状もあります。

そうなると安定経営の手段として、賃貸住宅を建てるという方向性が出てきます。

賃貸住宅を建てる際には、「土地活用の成功には市場調査が大事!」の中で、ニーズの把握の為の市場調査の方法で取り上げたように、所有する土地周辺の賃料相場や人口動態、世帯数、人口構成比などを予め調べてみることをお勧めします。所有土地を管轄する区・市役所で調べたり、ネット上で統計情報を調べることができます。

その情報に基づき、人口や世帯数が増えている地域なのか減っている地域なのか、単身者が多いのかファミリーが多いのかが分かれば、自分が建てるべき建物の間取りや建物の住戸数(世帯数)やコンセプトが定まってきます。

さらに「学生」「単身社会人」「高齢者」「外国人」のようなカテゴリーに分類されます。ターゲットを若い女性とするか、ペットを飼いたい人、オートバイ好き、セキュリティー重視の人、デザイン重視のお洒落な人、アッパーミドル(中流上位層)と絞り、明確な賃貸経営のビジョンを打ち出すことによって、確保すべき部屋の広さや間取り、設備・仕様、付加価値が違ってきます。また高齢者向けの場合、ユニバーサルデザインやバリアフリー、ペット共生型の場合は耐久性の高い素材や足洗い場など、ターゲットにより工夫が必要です。


失敗しないコンセプトづくり

賃貸用の住宅にエアコンは必須の設備。トイレ・バス別、ブロードバンド対応もなくてはならない仕様。

賃貸用の住宅にエアコンは必須の設備。トイレ・バス別、ブロードバンド対応もなくてはならない仕様。

例えば、大学が集まっている学園都市に土地を所有しているとします。賃貸住宅を検討する場合、4LDKの高級賃貸マンションを計画するでしょうか? 郊外の学園都市なので、大学職員や地域での大型ファミリーのニーズも見込めますが、わざわざ単身学生をターゲットから外してしまうことになります。仕送りやアルバイトで生活をしている学生には、ニーズに見合ったワンルームや1K、1DKなどの間取りと合理的な賃料設定をしたプランニングが必要であることはご理解いただけるかと思います。

立地条件をしっかりマーケティングした結果として、前述のように単身者をターゲットにする場合には、それに合致したプランニングをすると成功する確率が高くなります。単身者が物件を選択する際に重視するポイントとしては、「利便性」「賃料」「設備」「デザイン」が上位に挙げられます。最寄り駅、商業施設から近い、勤務先や学校に近いなど利便性が高い物件は人気があります。

また賃料も合理的な範囲内にとどめておく必要がありますので、営業マンやコンサルタントから提出された賃料査定書を鵜呑みにするのではなく、しっかりと納得のいく説明を求めるとともに、ご自身で対象地周辺を歩いてみて賃料相場を確認するぐらいが良いでしょう。設備については、エアコンは必須、更にバスとトイレ別は最近のニーズです。また、インターネットは当たり前の時代なので若い世代向けの無料ブロードバンド対応は必須設備です。賃貸経営は、大家さんが主役ではありません。借り手の視点で住みたい住宅をプランニングできれば失敗する確率は少なくなります。

一方、ファミリー向け物件の場合には、想定される家族構成をイメージしておくことが大事です。DINKS(夫婦のみ)なのか、子供のいる世帯向けなのか、高齢者が住むのかによっても部屋数や必要な設備が異なってきます。子供のいる世帯向けをターゲットとする場合には、学校や文化施設、公園などが近くにあるかなど「教育環境」が整っているかの検証も必要になります。学校に通う児童・生徒数の推移を調べてみると良いでしょう。ファミリー層をターゲットとする場合、分譲マンションや戸建住宅と競合しますので、特に注意が必要です。


ナンバーワンよりもオンリーワンを目指す

日本では少子化による人口減少が社会問題となっていますが、人口が減る一方で、晩婚・非婚化、離婚の増加、そして単身高齢者の増加による単身世帯数の増加という現象が起こっています。つまり人口が減っても、単身世帯数は増えているという訳です。また、日本に住む外国人が増えているというのも世帯数増加に一役買っています。5年ごとの国勢調査によれば、2000(平成12)年に131万人であった外国人が、2015(平成27)年には175万人と15年間で33.6%も増加しているのです。

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どのような商売も、常に競合相手が出てくるのが、自由主義経済社会です。土地の有効活用でいう競合相手とはライバルとなる同じ賃貸経営者ですが、競合相手がいるということは、それだけニーズがあるということです。何もない田舎の田んぼの中にアパートを建てても、競合相手もいない代わりに、入居者のニーズもありません。土地活用をする上で、ライバルとなり得る物件状況や参考事例などをよく把握しておくことが重要です。

また、競合相手が沢山いるからといって、ナンバーワンを目指す必要はありません。市場調査の結果、ニーズをきちんと把握し物件を計画することでオンリーワン物件になれれば、それこそ行列のできる、入居待ちが出るほど人気の高い物件となれる可能性も充分あるのです。どんなにライバルが多くても、他がまねできないような知恵や工夫、個性、サービスがあれば、競合に打ち勝つことができます。是非とも、コンセプトがしっかりした物件をプランニングしてみてください。


※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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