放射線・放射能汚染・医療被曝/医療被曝の安全性・リスク (レントゲン・CT)

レントゲンやCT検査で放射線被曝リスクはあるのか

【医師が解説】病院や歯科、健康診断などで受けるレントゲン検査。また、がん治療中などは連続して何度もレントゲン検査やCT検査をすることもあり放射線被曝してしまわないか、医療被曝の不安を感じる方もいるようです。結論は心配ご無用です。その理由を解説します。

狭間 研至

執筆者:狭間 研至

医師 / 癌ガイド

レントゲン検査で放射線被曝する心配はないの?

胸部レントゲン写真

病院でレントゲンを撮りましょうと言われると、放射線被曝が心配……。実際に医療被曝のリスクはどう考えればよいのでしょうか

病院やクリニックで受けられる検査として、一般的かつ代表的な「レントゲン」です。読者のみなさんも、きっと一度は受けられたことがあると思いますし、がんなどの病気で治療を受けられている方は、もう数えきれないほどたくさん受けたという方もいらっしゃるでしょう。

歯科治療時や年に一度の健康診断ぐらいなら、あまり気にならないかも知れませんが、体調が悪い時や、入院中、または継続して外来通院している場合などに、何度も続けてレントゲンを撮るとなると、医療被曝してしまうのではないかと不安を感じる方もいらっしゃるかもしれません。

今回は診察室でも質問をいただくことが多い、レントゲン検査と放射線被曝についてお話しします。

レントゲン検査、胃バリウム、CT検査で使われる放射線

医療の現場での放射線被曝
医療の現場では、いろいろな場所で放射線が用いられていますが、中には放射線を用いていない検査もあります。
放射線は、物質を透過する性質を持つために、体にキズをつけずに体の内部の情報を知るためによく用いられます。

一般に言うところの「レントゲン写真」では、この放射線を利用し、外から見ても分からない肺や腹部のガスの状況、骨折の有無などを調べることができます。咳が長引くときの胸部レントゲンや、おなかが痛む時の腹部レントゲン、打撲をした際の四肢のレントゲンや、歯科治療時の歯のレントゲンなど、使われる範囲は実に多岐に渡ります。

また、胃バリウム検査に代表される造影検査や、断層検査であるCT検査なども同じく放射線が使われます。

これらの放射線に対して特に不安を感じられるのは、頻繁にこれらの検査を受けなくてはならないときでしょう。たとえば胃がんの手術前には、腹部レントゲンや胃バリウム検査は必須ですし、手術後にも、おなかの動き具合を調べるための腹部レントゲンや、胃と十二指腸や小腸をつないだところがうまくつながっているのかを調べるための、造影剤を使った胃透視検査などが行われます。これらの検査を、数週間という期間内に行いますので、さすがに放射線を浴び過ぎなのではないか、他のところが悪くなってしまうのではないかと、不安に思われる方がいらっしゃるのも無理はないかもしれません。

なお、MRI検査や超音波検査は、それぞれ磁気や超音波を用いるため放射線被曝することは全くありませんので、ご安心を。ただ、MRIは、体内に金属物があったり、アートメイクを含むボディタトゥーや刺青があったりすると検査できない場合がありますので、注意が必要です。

それでは次に、レントゲンやCTによる放射線被曝のリスクの実際のところと安全性についてご説明します。

医療被曝の実際のリスク・安全性…体に無害な放射線被曝量は?

医療現場における放射線被曝
医療現場で用いられている様々な検査で、一体、どの程度の放射線被曝があるのか。イメージではなく、その事実を知ることは大切です。
以下では、具体的にイメージしていただけるよう、放射線の量を示す単位である「mSV(ミリシーベルト)」という単位を使いながらご説明します。

一般に、人間の体に影響がではじめる放射線被曝量は200mSVと言われています。原子力発電所などの事故で致命的な障害を起こしたような被曝量としては、数千から1万mSVのケースが報告されています。

では病院での検査で使われる放射線量はどれくらいでしょうか。

たとえば撮影の条件によっても多少異なりますが、胸部レントゲン撮影では0.05mSV。胃バリウム検査では2.0mSV。頭部CTでは0.5~1.5mSV、胸部CTでも7.0mSVといったところです。

また、意外なようですが、私たちは自然界からも放射線を浴びており、その平均が年間2.4mSVと報告されています。

これらの数値を比べてみるとどうでしょうか? レントゲン検査やCT検査などで被曝する線量は、健康に影響を及ぼす可能性の線量と比較すると、極めて小さいということが分かっていただけるかと思います。

「医療行為の原則」とは・不安な点は主治医に率直に質問を

医療行為の原則
レントゲンやCT検査を含めて、医療行為の原則とは、リスクをベネフィットが上回っていると判断した場合にのみ行うということです。
一方で、いわゆる「医療被曝」による被曝量がいくら少ないとは言え、むやみやたらにレントゲン検査を行うことはありません。

私たち医師が、検査だけでなく処置や手術、投薬といった医療行為を行うのは、かならず、それらの行為のもたらすベネフィット(利益)が、それに伴うリスク(危険性)を上回っている場合に限られます。いずれも何かしらのメリット・デメリットを伴うため、天秤にかけて総合的にメリットが大きい方法を取るのです。

年に一度の健康診断での検査はもちろん、がん治療や検査などを始め、種々の検査が立て続けに行われる場合も、基本的なこととして、医療における放射線被曝は健康被害をもたらす被曝量から考えても極めて少ないことを、まずは知っておいていただきたいと思います。

また、その検査を指示する医師は、少ない放射線被曝の危険性よりも、それによってもたらされる種々の画像情報から得られる利益が多いと判断しているということを思い出していただければ、と思います。

そして、最後に。不安なことやわからないことがあれば、率直に、主治医に尋ねてみてください。きっと、気持ちが軽くなるような答えが返ってくると思います。

■関連
・医療放射線被曝に関するわかりやすい解説
放射線被曝について(松下記念病院 放射線科)

・放射線は検査のみならず、がんの治療に用いられることも……
→「メスを使わない手術!?定位放射線治療とは?」(All About)

・航空機による放射線被曝について
→「航空機による放射線被曝の安全性とリスク」(All About)
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