人間関係

「嫁は叩かないと育たない」「正妻なんだから」。資産家に嫁いで子どもを奪われた女性の30年

共同親権への賛否が渦巻く昨今だが、離婚した母親が子どもを引き取らない理由は「母性の欠如」だけではない。古い価値観をひきずる資産家一族に翻弄された50代女性もそのひとりだ。

亀山 早苗

執筆者:亀山 早苗

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離婚後の母親が親権を持たない理由は、「母性の欠如」とは限らない

離婚後の母親が親権を持たない理由は、「母性の欠如」とは限らない

離婚すると、子どもは母親の元にいるものと思われがちだ。母親が子どもを引き取らないのは母性が足りないなどと非難されることもある。だが、事情は人それぞれ、やむを得ない事情で婚家に子どもを置いてきた女性も少なくない。

代々続く資産家に嫁ぎ、夫からは「平手打ち」

「若くして結婚、相手の家に入りましたが、ひどく古い価値観の家だったんです。嫁は誰より早く起きて働き、誰よりも遅く休むのが当たり前という家で……」

そう言うのはアケミさん(50歳)だ。いつの話かと思うほどだが、ほんの30年ばかり前のことだ。地方の小さな町で産まれ育った彼女は、21歳のときに5歳年上の同じ町の男性と結婚した。彼の実家は代々続く土地持ちで、親子で手がけている不動産業はかなり儲かっていたようだ。

「舅姑と夫の弟と妹、さらに私たちの子どもがふたり。一時期は8人家族で暮らしていました。三食の用意と家事、義弟や義妹からの頼まれ事など、家に関わるすべてを私がやっていた。それでいて子どもがぐずると夫に平手打ちされたり、うっかり頼まれたことを忘れると舅からもぶたれました。男は暴力をふるっていいと思っている家だった。舅はよく夫に『嫁は叩かないと育たない』と言っていた。おそらく姑もやられていたんでしょう」

女の子を産むと「なんのための嫁か」と言われ

第一子が女の子だったため、姑には嫌味も言われた。「なんのための嫁なんだか」と。結婚するまでは優しかった夫だが、結婚後も風俗に行ったり浮気したりは日常茶飯事。文句を言おうものなら、「おまえは正妻なんだから気にする必要はないの」と抑えつけられた。

「第二子が男の子だとわかってホッとしたとき、私もこの家に毒されていると思った。そのとき、いつか子どもを連れて出て行きたいと考えるようになりました」

第一子のときも第二子のときも、アケミさんは産後、退院してからすぐ家事育児に翻弄されていた。体調が回復するまでの時期は人によって違うが、昔から「お床上げ」は3週間といわれている。産後、せめて1カ月は無理しないことが大事だが、姑は「家事くらいできるはず」と言いきった。

「第二子のときのほうが辛かったですね。退院して2週間後に夫が迫ってきたときは、さすがに夫を突き飛ばしました。そんな気になれるはずもない。夫は怒って『出て行け』と言いました」

絶望したアケミさんだが、生まれたばかりの子を外に出すわけにもいかない。

>婚家を追い出された「恥さらし」扱い
 
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