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WWEを席巻する日本のプロレス文化

7月1日と2日の2日間、東京・両国国技館で世界最大のプロレス団体WWEが恒例の日本公演をおこないました。両日の事実上の主役になったのはシンスケ・ナカムラ(中邑真輔)、NXT女子王者アスカ、AJスタイルズ率いるザ・クラブ。日本公演という特別なシチュエーションを抜きにしてもWWEでは日本で育ったレスラーが台頭してきています。今、WWEを席巻する日本のプロレス文化に迫りましょう。

小佐野 景浩

執筆者:小佐野 景浩

プロレスガイド

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WWE日本公演で主役となったシンスケ・ナカムラ

日本のキャラそのままのナカムラとアスカ

7月1日と2日の2日間にわたって東京・両国国技館で開催されたWWE日本公演で主役になったのは今年1月に新日本プロレスを退団、4月1日にテキサス州ダラスにおけるNXTの「テイクオーバー・ダラス」でWWEデビューを果たしたシンスケ・ナカムラこと中邑真輔です。初日は若き日に天龍源一郎率いるWARで日本スタイルのプロレスを学び、やがてWWEでレジェンド的存在になったクリス・ジェリコ、2日目には元NXT王者ケビン・オーエンズに快勝してWWEデビュー以来無敗の記録を更新。大観衆の「ナ・カ・ム・ラ!」というWWE流のチャントが両国を包みました。

中邑の凄さはキャラクターが変わっていないことです。通常、WWEは選手をスカウトするとリングネームやキャラクターをWWE流にアレンジしますが、中邑はシンスケ・ナカムラとしてデビュー。変わったのはテーマ曲、それに必殺技ボマイェの名称がキンシャサになっただけ。あとはコスチュームも、ファイトスタイルも中邑真輔オリジナルです。キング・オブ・ストロングスタイルというキャッチフレーズも新日本時代のままで、WWEは中邑真輔をそのまま直輸入したことになります。

もうひとりの主役となったアスカは昨年10月にNXTでデビューし、シンスケ・ナカムラがデビューした4月1日のダラスでベイリーを撃破してNXT女子王座を獲得。日本人女子レスラーがWWEでチャンピオンになったのは立野記代&山崎五紀のJBエンジェルズ(88年1月=世界女子タッグ王者)、ブル中野(94年11月=世界女子王者)に次ぐ快挙です。初日にはナタリア、2日目にはベッキー・リンチ相手に王座防衛に成功しました。リングネームこそ華名からアスカに変わりましたが、ベースはサブミッションと打撃を主軸にした日本流のファイト。本人は「アメリカと日本では間やリズムがまったく違うので、そこで自分のスタイルをどうやってミックスさせるかが課題」と言っていますが、何も違和感はありませんでした。

シンスケ・ナカムラとアスカが所属するNXTはWWEの中でファームに位置付けられていますが、2人が1軍に昇格するのは時間の問題と見られています。

一昨年7月12日の大阪公演でハルク・ホーガンに呼び込まれてリング上で契約書にサインするという破格な扱いでWWE入りした元プロレスリング・ノアのKENTAの今後も注目されます。イタミ・ヒデオの名前でNXTでデビューし、昨年3月にはWWEの年開催大イベント『レッスルマニア31』にも出場しましたが、5月に左肩を負傷してずっと欠場を続けていました。それから約1年、6月30日、フロリダ州ウインターヘブンにおけるNXTライブ・イベントでカムバックを果たしたのです。今後のシンスケ・ナカムラとヒデオ・イタミの元新日本のカリスマと元ノアのカリスマの競争も楽しみです。

日本育ちの外国人レスラーもWWEで台頭

今回の日本公演でシンスケ・ナカムラ、アスカと同様に大人気を博したのが新日本でバレットクラブとして活躍したAJスタイルズ、カール・アンダーソン、ドク(WWEではルーク)・ギャローズの3人です。この3人はWWEでもザ・クラブなるユニットを結成。2日目にはザ・クラブとしてジョン・シナ、ジェイ&ジミーのウーソズのトリオと対戦しましたが、日本のファンはバレットクラブの復活に大喜び。バレットクラブ=ザ・クラブは、本来はヒールなのですが、試合後には客席四方に向かって深々と礼。彼らと日本のファンの絆が垣間見えたシーンでした。

このザ・クラブのように日本で人気を博した外国人レスラーもWWEで台頭しています。アイルランドから新日本の留学生になり、その後、IWGPジュニアヘビー級王者として人気者になったプリンス・デヴィットは一昨年10月にフィン・ベイラーの名前でヒデオ・イタミのパートナーとしてNXTデビューを果たし、昨年7月4日に古巣・日本でNXT王者になって大歓声を浴びました。

今年に入ってから日本からWWEに移籍したのはマイキー・ニコルス&シェイン・ヘイストのTMDKです。彼らはプロレスリング・ノアの留学生として日本の土を踏み、その後、正式にノア所属になり、GHCタッグ王者としても活躍。3月にノアにけじめの参戦をした後にWWEと正式契約し、5月にマイキー・ニコルスはニック・ミラー、シェイン・ヘイストはシェイン・ソーンに改名してNXTデビュー。チーム名もTM-61に変わりました。そして6月30日のヒデオ・イタミの復帰戦のパートナーにもなりました。WWEでは元GHCシングル&タッグ王者の揃い踏みという現象が起きているのです。

最近、アメリカのレスラーの間では「国内の小さなプロモーションでファイトしているよりも日本でファイトした方がWWEのスカウトの目に留まるチャンスがある」と言われています。日本のプロレスを学んでWWEに入るというのが理想のコースになっているようです。

また、日本人レスラーのWWE進出もさらに加速しそうです。6月23日にフロリダ州オーランドで世界各国から32人が参加した92キロ以下のクルーザー級クラシック・トーナメントがスタートしましたが、日本からは飯伏幸太、かつてWWEでトップを張ったTAJIRI、ドラゴンゲートの戸澤陽がエントリーされました。その模様は7月14日にWWEネットワークで配信されます。

WWEはテレビやネット配信に力をいれており、プロモと呼ばれるインタビューもレスラーにとっては重要な要素になります。かつては「ネイティブのような英語を操れない日本人はWWEでは成功できない」と言われていましたが、今では言語を超越した日本のプロレスのパフォーマンスが広く世界に認知されています。今後、ますます日本のプロレス文化がWWEを席巻することでしょう。

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