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『Maiko ふたたびの白鳥』西野麻衣子インタビュー!(2ページ目)

ノルウェー国立バレエ団プリンシパル・西野麻衣子さんを追った映画『Maiko ふたたびの白鳥』。プリンシパルとして活躍するキャリアの絶頂期に妊娠が発覚。出産を経て、『白鳥の湖』で舞台に復帰するまでを描いたドキュメンタリー作品です。ここでは、公開に先駆け西野麻衣子さんにインタビュー! 映画化の経緯と作品への想いをお聞きしました。

小野寺 悦子

執筆者:小野寺 悦子

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映画化の話が来たときの心境はいかがでしたか?

麻衣子>初めて監督のオセと会ったのはバレエ団のカフェでした。私の舞台を観て興味を持ってくれたということで、“麻衣子の映画を撮らせて欲しい”と彼女にプロポーズされました。話を聞いたときは、嬉しい気持ちと同時に、すごく迷いもありましたね。舞台を通して美しい姿を見せるのがバレエの世界であり、私たちダンサーの役目。でも舞台裏の話だったり、私のプライベートや過去のストーリーをお見せすることには抵抗もあったし、かなり複雑な気持ちでした。それに日本でも公開されると聞いて、日本の方はどんな風に私のことを感じるのだろうという不安もあって……。

出演を決めた最大の理由は、主人や家族の応援でした。実際映画が完成して、両親やお世話になった先生方への恩返しという意味でも素晴らしいギフトになったと思います。ただ、当初の予定では撮影は2年間という約束だったけど、途中で私が妊娠したこともあり、想像していたよりずっと長くなってしまいました。

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妊娠・出産のエピソードは想定外だった?

麻衣子>かなりの想定外です。撮影を始めたころオセに“麻衣子は将来お母さんになりたいの?”と質問されました。でもそのとき私は30歳で、キャリアが一番ピークのときだったので、“今はまだその予定はない”と答えていたんです。ところが撮影が2年目に入ったとき、思いがけず妊娠して。オセから“じゃあダンサーとしての麻衣子だけではなく、キャリアを持ちながら母になる麻衣子を追いたい”と言われて、2年間の撮影で終わる予定が最終的に4年間になりました。

なので、映画の趣旨も当初とはかなり変わりました。最初は私のパートナーが引退するところで終わる予定だったんです。けれど、妊娠をきっかけに、私と母との繋がりをもっと描きたいということになって……。映画にも映っていますが、母とは週に一度は話をします。すごく性格が似ているので、何でもわかってくれますね。

今はスカイプがあるから本当に近く感じます。私がバレエ学校に留学していた頃はインターネットもなかったし、コレクトコールでかけていたので電話代もすごく高くて、そう頻繁に話せませんでした。今はお金もかからずどこにいても家族とコンタクトできて、すごく幸せな時代だなって思います。



出産直前までバレエのレッスンを続けていましたね。

麻衣子>出産の二日前までレッスンをしていました。妊娠していてもバレエはずっと続けたかった。出産は大きな決断でしたが、子どもが出来たことを理由にバレエをおろそかにしたくはありませんでした。レオタードがぱんぱんに伸びた状態でしたけど、体力もあったし気分も良かったので、全く問題は感じなかったですね。もちろん私ひとりの努力だけではなく、お医者さまやトレーニングのチーム、監督も含めていろいろサポートをしてもらいました。

ただ妊娠している間は、自分の身体がどんどん変わっていくことに対してかなり不安はありました。この体型が本当に以前のように戻るのか、戻ったところでママになって自分の気持ちが変わらないのかと……。けれどアイリフが産まれて、今までよりもっと上に行きたいという気持ちが込み上げてきた。復帰を目指し、出産1ヶ月後にはもうトレーニングを始めていました。子育ても、バレリーナとしての自分のメンテナンスも大変ですが、すごく充実感があります。母として、また違った形で舞台に立てることがとても幸せですし、すごく楽しいです。

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周りのみなさんの反応はいかがでしたか?

麻衣子>産婦人科のお医者さまには“バレエのレッスンなんてとんでもない!”と言われましたね。けれどバレエ団に付属しているバレエ専門のお医者さまは、私たちダンサーがどれだけ毎日トレーニングをしているか知っているので理解してくれました。

妊娠五ヶ月まで舞台に出ていたりと、直前までバレエを続けていたので、バレエ団のみんなもいろいろサポートをしてくれました。でもなかには心配してくれるダンサーもいましたね。特に女性はそうで、“麻衣子、ビー・ケアフル。あなたはプロのダンサーだけど、プロのママじゃないんだよ”と言われました。でも私はダメなことや間違っていることをしたら自分のハートでわかると思った。“私はバレエをするために生きてるから”と言って、レッスンを続けました。

10代や20代のダンサー、これから子どもが欲しいと想っている女性たち、結婚したばかりの女性たちには“すごく勇気をもらった”“もしかしたら私にもできるかも”と言われました。あと監督のオセ自身も同じ悩みを持っていて、何年も出産を迷っていたそうです。だけど撮影を続けるうちに、“自分も映画監督として働くキャリアウーマンだけど、麻衣子を見ていたら仕事をしながら母親もできるんだって勇気づけられた”と話していて。そうしたら、実際妊娠して、この1月に出産したんです! 今後は監督と出演者としてだけではなく、ママ同士仲良くしていきたいですね。



育児に対するカンパニーや政府の協力体制も印象的です。

麻衣子>バレエ団には子どもを育てながら踊っているダンサーも結構います。ソリストで子どもを出産した女性もいるし、3人の子どもを持つコール・ド・バレエのダンサーもいます。彼女たちもママとして子どもを育て、毎日レッスンに通ってる。そういう方たちを見ていて、私自身やはりとても力付けられました。

主人の協力もすごく助けになりました。ノルウェーは男女平等の国なので、男性も当たり前のように家事に参加します。国が父親になることを応援していて、主人は私のキャリアをサポートするために5ヶ月の育児休暇を取ってくれました。特に主人は母親が同じ劇場でオペラ歌手をしていたのと、彼自身もオペラハウスで働いていたので、何も言わなくても私の状況を理解してくれます。ノルウェーの男性はすごく優しいですね。カムバックできるという自信は主人からもらいましたし、そのおかげで復帰も早くできた気がします。

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 夫・ニコライ氏と



出産後どうやってスタイルを戻したのでしょう?

麻衣子>母乳をあげているだけで、3~4週間したら自然と元に戻りました。産後4週間は筋肉がわかれてるから何もしてはいけないとお医者さまに言われていて、実際その間はバレエもお休みしていたんですけど。ただ出産の2日前までバレエのレッスンをしていたので、お腹が大きくても腕や脚の筋肉は一切落ちていなかった、という理由も大きかったかもしれません。



抜群のプロポーションをキープする秘訣とは?

麻衣子>ポジティブに生きること。それはスタイルだけではなくて、ひととしてとても大切なことだと思います。朝起きてシャワーを浴びたら、まず鏡を見て笑うのが私の日課。バレエの先生に“心がきれいじゃないと踊った瞬間にわかるのよ”と言われたことがありますが、確かにそう。舞台に立つ人間として、心身ともにきれいでいたい。このポジティブさ、アクティブな性格にはとても助けられてると思います。自分の持っているポジティブさで、舞台を通してみなさんにポジティブを分け与えられるから。

もともと食べることがすごく好きで、好き嫌いなく、何でも食べます。でもダイエットは一切したことがないんです。もちろん朝から晩までトレーニングしているということもあるけれど、こんな性格なのでじっとできなくて、家にいてもいつも走り回ってばかりいます(笑)。ただダンサーのお友達でダイエットをしている方はいますし、ひとにもよるのかもしれません。体質なのかもしれないですね。こういう身体に産んでくれた両親に感謝しています。

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